【SW2.5】ショートストーリーズ『呪いと祝福の大地』感想&レビュー

 どうも、2回に1回は武器習熟のダメージ追加を忘れてしまいます。地図職人です。

 

 もう発売されてから結構立っているような気もしますが、最近SW2.5のショートストーリーズ『呪いと祝福の大地』を購読しました。

 正直あんまり期待していなかったんですけど、思った以上に面白かったので、こうして感想?レビュー?紹介?みたいな記事を書くことにしました。鉄は熱いうちに撃てってね!

 興味があるけど買おうか悩んでいる方や、もう読んで他の人の感想を見てみたい!って方々の参考になればなと思います。

 

 

 

 

はじめに

 このショートストーリーズ『呪いと祝福の大地』は出た時からずっと気になってはいました。というのも、今までソード・ワールドが出した文庫本サイズのサプリメントラクアゴッドブック』『バルバロスブック』の2つは、僕の中でもかなりお気に入りの部類に入っているからです。ファンタジー物はその世界観にどれだけ浸れるかみたいな所が重要なわけで(個人の意見です)、そういう意味ではラクシアの世界の様々な要素について掘り下げてくれた2冊はかなり満足度が高かったからです。

 

 今作は“ショートストーリーズ”という形で、サプリメントともリプレイとも違う立ち位置にあるようだったので、様子見してから買うか判断しようと思っていたのですが、周りの友人が一行に買う気配がしなかったので買うことにしました。

 

本書の構成

 「冒険者からギルドの受付嬢、鉄道員など、合計10人の視点から描かれるソード・ワールドの世界。冒険だけではない人々の姿を、とくとご堪能あれ!」というのが本書の謳い文句で、その通り10の異なる視点から作られたショートショート集になります。

 最初の数ページがフルカラーのイラストで、その後にメインである10編の短編が続きます。それぞれはだいたい30ページぐらいなので、比較的するっと読めてしまいます。僕は仕事で電車に乗った時の行きと帰りの間に読み切りました。

 そして各短編の最後には「こぼれ話」という形で見開き1ページぐらいの補足やあとがきが載せられています。巻末に北沢慶さんによるちょっとした解説が載っています。

 「KADOKAWAの事だし最後のほうにちょっとだけデータ集みたいなのあるかな~」とか思ってましたけど、そういうのは全然ありませんでした。一応登場人物のステータスのまとめみたいなのはありましたけど、それも2ページだけです。ガチのガチで短編100%です。

 

それぞれの感想

 一応ネタバレには最大限配慮するつもりですが、どうしてもしちゃう部分はあると思います。新鮮な気持ちで最初は読みたいという方はここでブラウザバックを推奨します。

 

「新米冒険者の旅立ち」 著:北沢慶

 最初の話はとある村の少年が冒険者になろうとハーヴェスのギルドへと行く話。う~ん、丸い!文章も比較的読みやすいですし、ストーリーも王道というか、ある種お決まりみたいな展開が続きます。ちなみに僕はタビットのクソウサギ感が好きです。

 先陣を切るに相応しい作品だと思います。アルフレイム大陸の雰囲気をわかりやすく伝えようとする感じが伝わってきますね。

 ソード・ワールドの世界での“都市”“村”がどんな感じなのか、どう関わりあっているのかが少し見えるのもおもしろいポイントかなと思います。

 

「死体回収屋の多忙な日常」 著:北沢慶

 タイトルを見た僕「へぇ~、死体回収屋なんてあるんだ~~~~」

 僕はずっと冒険者の死体は別の冒険者が回収するものだと思っていたので(そのパターンもあるんでしょうけど)、死体回収を専門にしてる人たちがいるっていうのがちょっと面白いですよね。決して皆がやりたがるような仕事とは思えませんしね。こういう要素をシナリオのNPCとかでふっと出すと面白いかもしれません。

 文に関してはすごいリプレイっぽいです。普段のグループSNEのノリって感じですね。キャラクター同士の掛け合いが多くて、登場人物を掘り下げていく感じの進行です。地の文に若干の物足りなさを感じますがその分キャラが尖ってて、これはこれでいいんじゃないでしょうか。

 

「引退冒険者と、旅立つ新しい希望」 著:川人忠明

 引退冒険者をピックアップした話なんだけど、個人的には乗合馬車とか宿場町とか街道絡みの部分の方が面白かったですね。ファンタジー世界の日常みたいなものが見えてきて好きなんですよね~。

 街道はSW2.5で結構前に押し出されている要素の一つですし、アルフレイム大陸でセッションするにあたって何度もお世話になることもあるでしょうしね。そういう意味では(本来のテーマ含めて)冒険者に近い話題が多い作品です。

 ストーリーに関してはちょっと雑な印象を受けましたね。テーマが決まっている中で30ページ程度にまとめなきゃいけないので難しいんだとは思いますが…。ちょっとドタバタしています。

 

冒険者ギルドの風景」 著:川人忠明

 こちらは冒険者ギルドの受付嬢が中心の短編になります。SW2.5のルルブⅠのサンプルシナリオを読んだときから、ずっと冒険者ギルドの職員たちってどんな感じなんだろう…?って気になってたので待ってました~!って感じでした。

 もしかしたらグループSNEには「キャラは濃ければ濃いほど良い」という風潮があるのか、この短編に限らず個性をブンブン振り回す登場人物が多いです(普段ラノベを読まないからこういうキャラの“濃さ”に不慣れなだけかもしれませんが)。

 もしかしたら『呪いと祝福の大地』は全体的にキャラに対して好き嫌いがわかれるかもしれません。ネモネアが可愛いから皆、読もう!(駄目なオタク)

 

「これからのふたりの話をしよう」 著:河端ジュン一

 今度はリカントに注目した短編になります。リカントについてはルルブⅠを読んだときから気になっていたトピックなのでかなり嬉しかったですね。ただ、そういう参考書的な視点で読むと消化不良というか、色々疑問の残るお話でした。

 こぼれ話を読んだ感じだと、あくまでこの短編がリカントの来歴みたいなものを決定づけるものではなく、真実はその場その場のGM/PLに委ねられるという印象を受けました。本作もそういった“提案”の一つだと思うとなかなか興味深いです。

 しかし、ストーリーに関してはこれもちょっと雑な印象を受けました。テーマがテーマだけに短く収めるのは難しそうではありますが。「万事うまく行きすぎでは!?」という感想です。

 

「愛憎」 著:河端ジュン一

 この作品は10作中唯一蛮族サイドのお話になります。「えっ、蛮族賢すぎでは?これ本当に知能:低いですか??」とか一人テンション上がってたんですが、こぼれ話にて「知能:低い」≠「頭が悪い」という議論が展開されており、かなり面白味のある“こぼれ話”でした。

 ゆるふわ♡はっぴーえんどだけではなくて、こういうダークな雰囲気のお話もあるのはハイファンタジーっぽくていいですね!

 ただTRPGプレイヤーにはハッピーエンド至上主義って方も結構多いと思うので、そういう方々はちょっと注意してほしいですね。本書にはバッドエンドとまでは行かずとも、後味の良くない死に方をする登場人物もまあまあ多いですので。

 

コカトリスの丸焼き」 著:ベーテ・有理・黒崎

 その名の通り「コカトリスの丸焼き」を求めるストーリーになります。僕はファンタジー世界と料理は切っても切り離せない関係にあると思っています。キャラクター達の会話もコミカルで楽しくて結構いいです。

 ただ、つまらないとかいうわけではないんですけど、興味を惹かれる話題が出てこなかったのが残念でした。普通の読み物として見ると十分面白いんですけど、SW2.5というゲーム背景に読んでいる為か、やや味気なく感じました。

 

「手旗信号士ジャックの完璧から程遠い日」 著:ベーテ・有理・黒崎

 もうタイトルから分かる通りこの話だけ毛色が違います。将棋とチェスぐらい違います。だけどちゃんとソード・ワールドっぽさを前面に出しながら、鉄道という新しい要素を扱っています。アルフレイム大陸のある一面が見れると思います。

 話もまとまりが良く、短編ならではの面白さがあって良かったです。べーテさんは著者名と作品名からどんなゲテモノをだしてくるんだろう…?と身構えていましたが、すっきりとした短編が2つ続いたのでびっくりしました。

 

「歌に呪われて」 著:清松みゆき

 僕の中で『呪いと祝福の大地』ナンバー1作品はこの『歌に呪われて』です。ただただ面白かったです。話の展開も、キャラクターも、描写に関しても10作品の中で頭一つ抜けてるなと感じました。本当に面白い!!

 本作ではSW2.5によって戦闘力を大きく伸ばしたバードが話の展開の中心になっていきます。主人公はこのバードとは別のキャラクターですが、二人は一体どういう関係なんだろう?と気になってしまい、読者の目を次へ次へと運ぶ力があります。

 バードってなんとなく陽気なイメージが浮かびますけど、冷静に考えて他人の考え方に干渉できるってめちゃくちゃ怖くないですか?本作にはそういった不気味さの側面もアクセントになっていて、ものすごく魅力的なキャラクターが出来上がっているように感じます。

 

「大地に花が満ちるように」 著:秋田みやび

 この話も結構好きです。爽やかな読後感があります。ファンタジーでの種族毎の寿命の違いってのはよくテーマになると思いますが、不老のナイトメアと寿命10年ほどのメリア(短命種)の2人(?)の出会いとその後がコミカルに描かれています。でも、真面目な部分は真面目に書いてて、話のメリハリみたいな部分もよかったと思います。

 こぼれ話ではメリアの夜についてちょっと書かれていました。[繁茂する生命]によってメリアは睡眠が必要ありませんが、これは思った以上にシナリオフックになるのかもしれません。例えばメリアしかいない村には完全に睡眠時間がないわけですから、外部からは想像できないような変わった文化があってもおかしくないですしね。最初ルルブを読んだときに寝ずの番しか思いつかなかった僕はまだまだですね。

 

まとめ

 800円ならちょっと美味しい定食屋ぐらいの値段だし買ってみるか。ぐらいの軽い気持ちで買いましたが、想像していたよりも面白かったです。funnyよりはinterestingですけどね。僕的には値段相応の価値はあったと思います。

 ただ、何を求めているかみたいな部分は大きいと思います。ただ単純に読み物が欲しいんだったら、小説を買った方がいいとは思います。funnyよりinterestingと言ったように、後ろにSW2.5というTRPGがあるからこそ楽しめる部分がやはり大きいというのは否めませんし。TRPGに課金するという意味ならプレイヤーが利用できるサプリメントや、同じ価格帯のリプレイ小説だって候補です。僕たちはアラブの石油王ではないので欲しい物をなんでも買うというわけにもいかないですしね。

 「呪いと祝福の大地」の一番の特徴は、SW2.0のテラスティア大陸と比べて世界の情報量が少ないアルフレイム大陸の雰囲気を伝えようとして物語が紡がれているというところです。RPにこだわりたいタイプの人や、シナリオを書くときにしゃれた演出をしたいGMなんかにはかなり合ってるんじゃないでしょうか。

 何よりこういったデータが載っていないただただ世界観を使えるだけの本が販売されるという事実がすごい嬉しいですね!今のTRPGブームの影響を感じます。こういった形のものがまた出たら嬉しいなと思います。

 

それでは楽しいTRPGライフを!